「……俺はおまえのこと、そんなキライじゃねぇなあ」
「はっ。くだんねぇな」
「まったくだ」
土方は銀時の顔を覗き込んだ。その表情は銀時の愚かさを嗤っているようにも見えたが、それはただの錯覚でしかない。銀時に興味の無い彼は銀時の愚かさには気付いていなかった。だから残酷さにも気付かない。銀時を嫌う土方にとって銀時の愚かさは決して残酷ではないから。
迎えた絶頂の余韻に荒く息をつく銀時の足を抱えあげて、土方は股の内側にべろりと舌を這わす。体を丸められた姿勢のために、間近でその様子を見てしまった銀時は一度鎮まった欲情が再び熱を持つのを感じ取った。ごまかすように顔を背けたが土方は口の端を吊り上げてせせら笑う。まだ足りねぇのかよ?抜かれずにいた土方のものが銀時の体内でゆっくりと動く。銀時は身震いした。
「てめぇは俺のこと嫌いでなくったって、なんとも思ってねぇんだろうが」
くだらねぇこと考えてんじゃねぇよ。土方は鼻で嗤う。銀時はその悪意ある笑みに、情欲に濡れた瞳で微笑み返した。
「でも、おまえとのセックスはキライじゃねえんだよ」
「同感だ。ムカつくが、相性は悪くねぇ」
銀時の体を反転させ土方は動く。遠慮も何もない動きに銀時はただ声を上げ続けた。腰を高く掲げた姿勢を恥ずかしいと思う羞恥心はとうの昔に消えた。純粋に気持ちいいと思う、ただそれだけの思考で銀時は土方に溺れた。
ここに銀時を知ることのできる人間が何処かにいたのなら、銀時を見て、お前は馬鹿だと優しく言ってくれたかもしれない。だけど銀時をよく知る人間も知ることのできた人間もこの世界の何処にも居なかった。銀時は巧妙に徹底的に、己の残酷さを隠していた。自分自身ですら時として気付けないほどに、深く、深く。
嫌いでなくともなんとも思っていないだろうと、銀時の内情を言い当てた男こそが銀時を理解している事実になど、土方はもちろん、銀時が気づく由も無かった。