実は双子でした。
そんなドッキリをさせられたって、楽しくもなんともない。
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今まで親も子も兄弟姉妹もない独り身だと思っていた恋人が、実は一卵性なのか二卵生なのか判断つきかねるそっくりさんでその割には決定的な違いを持つ双子だったと知った男の反応は、見てるこっちが 「あらどうしましょう」 と困るようなものだった。まず最初に 「なにふざけてやがる」 とでも言いたげな表情で金髪を見やり、次いで 「あれ?なんか違くねえ?」 と誰でも分かる違いに戸惑い、そして両者を見比べて暫く思案するように首を傾げた後、「なんだこれ!」 というようなビックリマークを頭上にでかでかと飛ばした。それだけなら何も彼に限った反応ではないのだろうから銀時も困らないのだが、如何せん、相手は容姿に反して銀時の母性(父性?)をくすぐる可愛い子ちゃんなのだ(言い方古ぃなオイ)。
「 俺、二股かけてたりとか、してないよな?」
おろおろと不安そうに見てくる土方に、退屈そうに隣りで欠伸をかましてた金色頭が 「かっわい〜v」 なんて言い出すものだから、銀時はそいつの足を遠慮なく思い切り踏んづけてやった。
こいつは俺のもんだ。手ぇ出すな。
昨夜のうちに言っておいた一方的な約束は、しかし既に八割ほど、破られていた。
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そいつが現れたのは本当に突然だった。いつものように部屋でぐうたらしている昼下がり、鳴らされたチャイムに客かと思って開いた扉の向こうで自分のそっくりさんが 「ハァイ、お兄ちゃん。初めましてー!」 なんてムカつくテンションで挨拶してきたものだから、タチの悪い悪戯だと判断して即効で入り口を閉めた。もちろん鍵を掛けることも忘れない。しかしその男の姿を声をしっかり見て聞いていた新八があんぐりと口を開けて固まって神楽が 「銀ちゃん弟いたアルか!?そんなふしだらな子に育てた覚えはありませんヨ!」 なんて意味の分からない台詞を叫ぶものだから、おまけに入り口をガンガンと乱暴に叩かれ「お兄ちゃん入れてー―!!」 なんて叫ばれ階下から 「いつもいつもうるせーんだよ!!」 と妖怪お婆の声が響いてくるものだから、「お兄ちゃん呼ぶな!」 と一喝して部屋の中に渋々入れてやった。そうして改めて見てみれば、その男は銀時と見間違えてもおかしくないほど体躯も顔の造形もそっくりで、しかし無闇やたらと存在を主張しようとする金色の頭と春空を思わせる水色の瞳をした、銀時にすれば自分の偽者のような姿の人間だった。
男の名前は金時といった。金色の頭が金時、銀色頭の自分は銀時。なんとも分かりやすくセンス感覚ゼロの名前だ。いったい自分たちの親はどんな人間だったのか久しぶりに興味が湧いた。少なくとも、巷で流行ったこともあるらしい名前で運勢を決める本なんかは一度も読んだことのない人間であることは間違いない。
図々しくも二人掛けのソファの真ん中に座って菓子を要求してくる男は、新八がびくびくしながら出した茶を飲んで一服してから事情を説明し始めた。自分は遠江の方に住んでいたがどうにも住み心地が良くなく、客の一人である元攘夷志士が江戸に自分のそっくりさんがいるという話を以前していたことを思い出して江戸へ放浪の旅に出ることをなんとなく決意し、その途中で本当に自分のそっくりさんがただのそっくりさんなのかを思いつきで探偵事務所に頼んで調べてみたところ、血液検査でなんと自分の血縁者であることが意外にも判明、それなら遠慮する必要もないやとこうして訪れた、というような内容をだらだらと語った。
「人のこと言えねーけど、随分とまあ、お気楽な性格してんなぁ、おい」
「そりゃ双子だしね〜。似れるところはとことん似ちゃってるんじゃない?」
「だけど環境が違えば双子といえど似つかなくなるものじゃないんでしょうか」
「あったりまえじゃん!オレは万事屋なんて堅気じゃない仕事はぜってー無理だから賭けてもいいよこれ」
「なにを賭けるんだよ……ていうかホストだって、堅気な仕事じゃねーだろ充分」
「それって偏見っていうんだぜ?『ジュリアン』のナンバーワンホストを嘗めんなよ!」
「あれ、この莫迦な切り返し方にはちょっと覚えがあるぞ?」
「銀さんが二人いる……」
「違うところは髪と目の色だけアルね」
「あとテンションがちげーよ。俺、こいつほどハイじゃねーもん」
既に銀時に生き別れの弟がいたことについては、誰も気に留めていなかった。神楽も新八も、「まあ銀さんだから」で脳内完結を果たしているに違いない。そして当事者のひとり銀時は、そっくりさんが自ら「お兄ちゃん」と自分に向かって叫んだ時点で、ある程度の覚悟と予想はできていたから、というより自分の生まれは何ひとつ知らなかったから、自分に血の繋がった身内がいるという違和感ができただけで、とりわけ大した問題でもないように思われた。
「それで、俺のとこに来てどうするつもり?言っておくけどウチは他人を養うほど裕福じゃねえからな」
「わぁってるよ。自分の飯代くらい、自分で稼ぐさ。でもさ、今はほとんど無一文な状態なんだよね。まとまった金ができるまでは泊めてくれね?仕事見つけて金もらうまでだから、一月以上はかかっちまうだろうけど、その間の生活費は払うから」
少々、人物評価に訂正が入った。金銭感覚的には自分よりずっとしっかりしているようだ。隣りで新八がなにやら感心したような目で金時を見上げている。内心では「銀さんもこれくらい考えられたら」とかなんか呟いているんだろう。
「しょーがねぇな。金ができるまでだからな。だらけんなよ」
そっくりそのまま返すアル。そんな言葉は金色ではなく居候の少女からもたらされたが、そこらへんは知らん振りだ。
一方、暫しの宿を手に入れた金時は 「まっじで?サンキューお兄ちゃん!」と銀時の手を握ってぶんぶんと上下に激しく振っている。逐一リアクションの大きな男だ。ていうか目に輝きがあることが驚きだ。自分がこんな目をしたらどうなるのだろうと、しょうもないことを想像しかけて、それは目の間の男の頭を金色から銀色にするだけで事足りるのだと思うと、少しだけ気が滅入った。
さらに言うなら、自分と同じ顔にお兄ちゃんと呼ばれるのは気持ち悪かった。
万事屋には既に居候が一人と一匹いる。生活費を払ってくれるなら一人くらい増えたところでどうってことないだろうと思ったが、認識が甘かった。新しい同居人は一人前の男で人間で、ソファや押入れやこたつで寝てくれるわけではないのだ。そして坂田家には今余分な毛布は無い。よって、金時はその夜、銀時と同じ布団で寝ることとなった。
そこまではいい。一人分のスペースはとても狭いが、一緒に住むことになった男を追い出そうとするほど銀時も性根が腐っているわけじゃない。そして歌舞伎町へ遊びに行くにはちょっと気分が疲れていた。実はそれなりに衝撃を受けていたのかもしれない。
とにかく目下の問題は、目の前の金色頭が、かなり騒がしい人間であることくらいだ。
「なんか修学旅行みたいじゃね?あれ違うか。幼稚園生?それとも親子?」
「俺ぁ修学旅行でヤローと同じ布団で寝た覚えもないし幼稚園に通ってないからガキがどう寝てたのか知らねえし親にも会ったことねぇから一緒の布団で寝れば親子になるのかは分からねぇな。早く寝ろ」
「え〜やだやだ。もっと喋ろうよ、せっかく二十何年ぶりに会えたんだからさ!もっと熱く語ろうぜぇ!!」
「なんでてめーはそんなハイなんですかオイ。ついてけねーよ。寝かせてくれよ」
背中を向ければまだ寝んなと揺り動かされ正面を向けばすぐ目の前で自分と同じ顔が意気揚々と徹夜に挑もうとマシンガントークを繰り広げている。どうにかしてくれ。自分と中身が少しでも似ているのなら追い出しても平気だったかもしんないとか、重い瞼をうっすらと開けながら後悔してみたりした。
「も〜俺眠いよ……」
もぞもぞと布団の中に逃げた。
月明かりの入り方からすると、今は夜中の1時をまわったころだろうか。明日は仕事が入っていないけれど、人にと会う約束がある。そしていつ何事が起こるかわからない身の上、眠いときは素直に身体の欲求に従っておきたい。
そんな銀時の思いが伝わったのか、金時の声がぴたりと止まった。
沈黙。
諦めてくれたのかなと、ちょっと安心したとき、目の前から「へえ〜………」 と、聞いた途端に背中がぞわりと粟立つような、小悪魔的な声が聞こえてきた。
「ね、銀時」
「……なに?」
「銀ちゃんさ、彼氏いるでしょ」
絶句した。
彼氏?彼女じゃなくて彼氏?
頭まで被っていた布団から少しだけ頭を覗かせて、金時を見てみる。
なんとなく、嫌な予感がした。
「………………………いる、けど……………」
「やっぱりね」
にんまりと笑われた。
自分がこういう笑い方をするのは、なにを考えてるときだ?銀時は逃げようとする答えを捕まえに思考回廊のなかを走り回って、「悪巧みv」 と笑う自分にぶち当たった。
何をするつもりだ、こいつ。
「言っておくけど、そいつは俺のだかんな。ぜってー手ぇ出すなよ。出したら追い出すかんな。江戸にいられなくしてやるからな」
「大丈夫ダイジョーブ。人の恋人には手出ししないからオレ」
ちっとも大丈夫に見えないし信用もできない。やっぱ同じ布団で寝るのは駄目だ。気分は乗らないけど歌舞伎町へ遊びに行こう。そう決意して身を起こそうとした銀時は、ぎくりと身を固めた。
「大きさって同じかな?ね、見てもいい?」
「はいどーぞ、なんて言うとでも思ってんのか!?っんだよテメー、変態!放しやがれ!!」
「うわ〜なんか新鮮な反応でオレ、ドッキドキだよ。襲っちゃう?ヤっちゃう?ね、近親相愛って駄目かな?」
「駄目に決まってんだろ〜が最近のガキは怖ぇーなオイ!」
「ガキじゃないよ。同い年ですよ〜」
「ちょ、まじでやめろよテメー!!!ほら、向こうには本物のガキもいるし!ね?ほらいい子だから触るな顔をづけるなぁ!!!!」
「だいじょーぶ大丈夫!キスしてれば声出ないし!オレいい子じゃないし!問題ナッシング!」
「い、(いやぁああああああぁ!!!)」
問題は大有りだった。
だけどまさか、二十何年ぶりにして初対面な双子に食われるなんて、誰も想像できないだろう?
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朝日が眩しかった。そして自分がすっかり汚れてしまった気分だった。
「だるい……眠い………」
「銀時は体力ないね〜。運動不足?」
「テメーが、ちゃんと呼吸させてくれねーだろうが……」
「だって口離したら声漏れそうなんだもん。銀ちゃん堪え性がないから」
まさか×回もした後とは微塵も感じさせない軽やかさで起き上がった金時は、布団の上でぐったりと横たわる銀時の頭をぐしゃぐしゃと撫でてシャワーを浴びに行った。これではまるで、恋人同士のようではないか。
これはヤバイ。本気で銀時は身の危険を感じて焦った。このまま一ヶ月もの間、あの男と同じ屋根の下で暮らさなければならないのか。その間に何回自分は襲われる?くどいようだがもしあの男と自分が外見だけでなく中身も似ているところがあるのなら、このままでは絶対に終わらない……!
「ね〜銀ちゃん」
タオルを腰に巻いた状態で金時が部屋に戻ってくる。「……なんだ?」 気だるく顔を上げて、聞くんじゃなかったと後悔。
「バスルームで2ラウンド、しない?」
「溺死させてやろうか」
今日、あいつとの約束、どうしよう。銀時は遠くに蹴飛ばされた枕を抱き寄せて、しくしくと涙を流した。
約束は公務の終わる5時を過ぎてからということになっていた。天下の治安警察にだって労働基準法は適用されるんだと威張って言っていたこともあるような。とにかく夜勤も残業も予定には無い本日、土方は銀時と会う約束をしていて、一週間ぶりの逢瀬に銀時も楽しみにしていたのだ。ぎりぎりまで迷い、それでも結局会いに行くことにしたのはそんな理由からだし、昨日からの騒ぎで身も心も疲れ果てていた為に癒しが欲しかったからかもしれない。普段はそっけないようだが、こちらから甘えればとことん付き合ってくれる優しい男なのだから。
だけど、ヤられちゃったのは、ばれるよなぁ………。
立ち止まったりふらふら歩き出したりする銀時を通り過ぎる通行人は気遣わしげに或いは迷惑そうに見ていたが、進む足は止まらない。腹が空いたら鳴るように、身体は欲求にはとても素直だ。今の銀時には『土方に会う』という何にも勝る欲求がある。
幸いなことに、金時は銀時の身体に痕を残すようなことはしなかった。が、行為の後の独特の倦怠感は、鈍感なあの男でもさすがに気づくだろう。ていうか、そっちのことに関しては必要以上に鋭い。気がする。
「あ〜憂鬱だぁあ〜〜……」
「頑張れよ銀時。ファイトだ。世の中辛いことばっかじゃねーからさ」
肩をポンと叩かれた。
この一日ですっかり慣れたとはいえ、未だに見た瞬間は少しだけ驚いてしまう顔が、にこにこと笑みを絶やさずそこにいる。
服は何着か自分のものをちゃんと持ってきたと聞いているはずだが、銀時が今まで見てきた自分の服が裸の王様の如く見えているものと実物が違うなんてことではない限り、今金時が着ている服は、銀時のものだ。
しかし銀時はその点には触れなかった。
「…………………………………………なんでいんの」
おまえ、昼前に出て行ったよね?
「面接終わったの。仕事は明日の夜からなの。だからヒマなの。で、どこ行くの?恋人んとこ?オレも行っていい?行っていい?」
「っだー――!!なんでそうテンションが高いんだよ!それにおめー昨日手ぇ出さないって言ったじゃねーか!帰れ!」
「え〜銀時ひっど〜い」
あともう一押しで帰ってくれそう。
そんな時。
「 あれ、旦那が二人もいる」
悪魔が一匹増えてしまった。
+ + + + +
大丈夫。俺達が入れ替わったことはないしお前が間違えてうっかり二股かけてちゃったこともない。まずそう言って土方を落ち着かせた銀時は、金時が家を訪れてからのあらましを、夜のことは省いて全て話した。話の途中で土方が興味深そうに金時を見つめたりするものだから、ちょっとと言わずにかなりジェラシーを感じたが。
「で、総悟にそいつも連れてこられたと」
「うんそーなの。分かる?ねえ分かる?俺の苦労が」
時々してみせる泣き真似ではなく本当に涙を目尻に溜めてる銀時を土方は哀れみの篭った手で撫でてやった。銀時が言うほどの苦労が起きたのか今の話では察せ無かったが、どうせ沖田が何か言ったのだろうと勝手に推測して。その予想は微妙に大きく間違っていたが、昨夜の出来事に心痛めていた銀時には土方のぎこちない優しさだけで嬉しい。勢いに任せてそのまま土方の胸の中に飛び込んだ。傍らでそんな二人の様子を金色頭は「うわラブラヴじゃんかー」と楽しげに見つめている。そのコメントに土方は苦笑した。
二人並んで部屋に入ってきたときはなんの冗談だというほど瓜二つだったが、こうして性格を把握して改めて見比べてみれば、似ているようだが全く違うことに安心する。髪の色が雰囲気に多大な影響を与えていることは間違いないが、それでも銀色の方が金色より持っている雰囲気が静かなのは気のせいじゃないはずだ。
「せっかくだし、3人で飯でも食いに行くか?」
「え、ま 「いや俺今夜は二人っきりがいいんだけどな!!」 じで?」)
もしやタダ飯にありつけるかもと目を輝かせた金時の声を、それを幾重にも上回る音量で銀時が掻き消した。いつにない積極さと大声にびっくりした土方は数秒の間言葉を忘れ、彼の中では決定事項となったタダ飯を邪魔された金時はむうと頬を膨らませた。
「お兄ちゃんのケチー」
「お兄ちゃん言うなっつうの。土方、こいつのことなんか無視だからな。構ったら浮気と見なすからな」
「あ、ああ……」
何故か必死に距離を作ろうとする様子に、これは何かあったんだなと気づいたものの、銀時がここまで金時を拒絶する理由までは思いつかない。突然生き別れの兄弟が現れれば戸惑ってもおかしくないだろうが、銀時の反応からすると戸惑いというよりは恐怖に近いものが感じられて、土方は首を傾げた。今の台詞からすれば、自分とそっくりな男が現れたことで銀時から金時に心変わりすることを恐れているように受け取れるのに、なんとなくではあっても確信してそれは違うと頷いてしまえて哀しい気もしないわけではないが、まあこいつが相手だからしょーがないさと一人完結。愛の力とはかくも偉大なり。
「悪いが金時、こいつがそう言うから、今日は帰ってもらってもいいかな」
「別にいいよー。オレはさっきの少年と遊んでくるから〜」
気にした風もなくにこにこと笑って立ち上がる金時に、いいヤツじゃねえかちったあ見習えよと腕の中の銀時にこっそりと思う。
しかし。
「ねぇヒジカタさん」
「ん?」
扉を半分ほど閉めたところで思いついたように土方を振り返り、金時はにーっこりと笑う。
腕の中でビクリと銀時が震えた。
「銀時、オレが貰っちゃってもいいかな?」
その一言で彼らの間に何が起きたのかある程度というかほとんど理解してしまった自分の洞察力をありがたいと思うはずもなく、大人しく自分に抱っこされている銀時が半ば放心状態になっていることに気を取られることもなく。少しは動揺したかといえばそのはずだが、馬鹿なやつら、とだけ声もなく呟いただけだった。
土方は冷静に、そして大胆かつ不敵に笑った。
「悪いが」
あれ予想外、というように金時がちょこっとだけ首を傾げた。腕の中でもぞりと銀時が目を醒まして恐る恐る自分を見上げてくる。何を言われるのかと胸中ではムンクの叫びさながら悲鳴を上げているのだろうが、土方は金時に向けた笑みをそのまま銀時にも向けた。
「こいつは俺だけのもんだ。双子だからってこれ以上は一欠けらもやんねーよ」
見せ付けるように銀時の手を取って口づけた。見上げてくる青白い顔がみるみる赤くなっていく。何かを言いたそうに唇が動いたが「あ、え、」とか母音が出てくるだけに留まり、しょーがないから子供をあやすように額にキスを落としてやった。
「うわ〜。あてられたよ……まいった」
そんな負け犬じみた台詞を言いながらも金時の顔はとても楽しそうに笑っていた。声と表情が別の生き物のように違う。なんとも器用な男だ。
「総悟と変なことやらかしたらしょっぴくからな」
「考えときまーす」
手をひらひらとさせながら扉を閉めて去っていった金色。残された銀色は暫くしても呆然としたままだったので、痺れを切らした土方はもう一回今度は唇にしっかりキスをした。