「俺、甘いもんはあんま好きじゃねえんだよ」

唐突に告げられた衝撃の告白に、頭をガツンと横殴りされたようだった。え、なにそれ初耳。ちょうど特大チョコレートにかじりついたとこだった銀は目を丸くして高杉を見返した。
ちょっと待ってください初耳なんですが、それってもしかして別れ話への導火線ですか。
自分と糖分はもう切っても切り離せない関係。それこそ数十年枕を共にした熱愛夫婦より熱く生れ落ちてから十数年で必要不可欠になった朝夕晩の三食より大切なもんで、俺の一部なんですが。だけど片や高杉とは切ったら切れちゃうかもしれない関係。どうしたらいいの俺。
高杉に会うときは糖分控えろってことか?いやだけど彼の出現はいつだって神出鬼没なわけで、朝練の時間を除いたって8時半から部活が終わる午後6時までずっと糖分無摂取だなんて、それこそ不健康で悶死してしまいそうだ。
仕方がないから高杉が近づいてくるのを見た時は甘味ではなく酢昆布を口にすることにした。塩味がしょっぱくて口の中が引き締まる感じはキスするのにいい感じだったのだけれど、キスし終わったあと高杉が変な顔をしたもんだからやっぱ酢昆布はやめるべきかと思案したところで、しょつぱいの嫌いなんだよ俺、とのこと。
「なんでいつもみたく甘くねーんだ」
「だっておまえ、甘いの嫌いって言ってたじゃんか……」
そんなの、と高杉はふんぞり返った。
「だっておまえ、甘いもん食ってる時俺のことほったらかしじゃねーか」
衝撃的告白。今度は頭突きをかまされた気分だった。
ポケットから飴玉を取り出して口に放り込む。ころころ転がして口の中に飴の糖分が行渡ったところで高杉ともう一度キスをした。
顔を離して、くそ甘ぇ、と囁かれたが、嫌がっている様子ではなくてむしろ、
「やっぱおめーはこんくらい甘くなきゃしっくりこねーな」
ちょっとだけ笑った。
もう一回、今度は口の中の飴玉を絡めるようにしてキスをして、いつもより甘い糖分に夢中になった。