腕を掴まれて、筋を抑えられる。痛いと思うより先に息が止まった。止まったまま、口付けられた。
「やっぱりお前のことは理解できねえ。お互いに好きで、愛し合って。それで普通はハッピーエンドだろう。どうしてそれじゃ駄目なんだ」
「俺だってシズちゃんのことが理解できない。キスしてセックスして、それ以上にどうしたいの。殺し合いだってしてるじゃない。もしこのまま喧嘩を続けて本当にどちらかがどちらかを殺せたら、それこそ最高にハッピーエンドじゃない。殺せなかったらそれもハッピーエンドだ。どうしてそれじゃ駄目なの」
普段の馬鹿力をどこに忘れてきてしまったのかと疑うほどの柔らかさで抱きしめられる。静雄を纏う空気が哀しい哀しいと伝えてくるのに、どうしたら同じだけの想いを返せるのかが分からない。ねぇシズちゃん苦しいよ。なんだか一緒にいると辛いんだ。なのに離れたくない。一緒にいたい。矛盾していることは分かっている。でも、相反するものがあるからこそ二人は一緒にいられる。
静雄の背中に腕をまわして、彼の体に触れた其処だけが火をついたように熱く感じる。
「こんなに大好きなのに、ね」
静雄が奥歯を噛みしめて、泣きだす直前の幼子のように体を震わせるのを、臨也は酷薄に笑いながら抱きしめ続けた。